2023年10月02日(月)  
秋の花粉症

花粉症といえば春のスギ花粉がイメージされますが、花粉症は春だけでなく1年を通してみられます。8月から10月くらいにかけて飛散するブタクサやヨモギ、カナムグラ(雑草)などが秋の花粉症のアレルゲンとなります。

これらの雑草は道脇や公園や河原などに多く自生していますが、花粉の飛散距離が数十メートルと遠くに飛ばない花粉なので近づかないことで回避することが可能です。ただし、春のスギ花粉よりも花粉粒子が小さいので下気道まで影響して喘息発作のようになる方もいるので注意が必要です。この時期に見られる透明の鼻水や喉のイガイガ、春の花粉症のような症状は秋の花粉が原因かもしれません。


2023年09月15日(金)  
帯状疱疹と帯状疱疹ワクチンのお話

4月から中央区でも帯状疱疹ワクチン接種の助成が開始されたこともあり、当院にもワクチン接種希望の方が最近多く来院されます。テレビCMの影響もあるかもしれません。

帯状疱疹とは、水ぼうそう(水痘)と同じウイルスが原因で起こる皮膚の病気です。水ぼうそうが治った後もウイルスは体内(神経節)に潜伏し、加齢や疲労・ストレスなどで免疫力が低下するとウイルスが再び活性化して帯状疱疹を発症します。 

幼い頃に水ぼうそうになったことがある人には誰にでも起こりうる病気で、体の左右どちらかの神経に沿って、痛みを伴う赤い斑点と水疱(水ぶくれ)が多数集まり帯状に出現するので、すぐに分かります。
症状の多くは上半身に現れますが、顔面、特に目の周りにも現れる場合は角膜炎、顔面神経麻痺、難聴などの合併症を引き起こすこともあります。

通常は皮膚症状が治ると共に痛みも消えますが、神経の損傷の程度によってその後も痛みが続くことがあります。これは「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれ、最も頻度の高い合併症です。この神経痛はなかなか治らないので、 「友人や家族が帯状疱疹になって辛そうだから…」という理由で予防接種を受ける方もいらっしゃる程です。
「焼けるような」「締め付けるような」持続性の痛み、「ズキンズキンとする」痛みが特徴で、 50歳以上で帯状疱疹を発症した人のうち約2割が「帯状疱疹後神経痛」になるとの報告もあります。

帯状疱疹は、帯状疱疹ウイルスの特異的細胞性免疫の低下で起こるため、血液検査での抗体値の測定で判断をすることは意味がないと言われています。発症のメカニズムから考えても、「抗体があれば大丈夫」ということではないようです。帯状疱疹ワクチンを接種することで、低下している細胞性免疫を賦活化することになり、その結果として帯状疱疹の予防効果が得られることになります。

帯状疱疹ワクチンは、水痘生ワクチンとサブユニット(不活化)ワクチンの2種類がありますので、ご希望の方はお問合せ下さい。


2023年08月25日(金)
新型コロナ後遺症とエクソソーム療法(幹細胞培養上清液療法)

新型コロナウイルス感染症は今年の5月から感染症法上「5類」に引き下げられました。当院で診断されるコロナ患者さんも軽症な方が多くなっていますが、まだまだコロナ陽性者は減らない状況です。それと同時に、当院を受診される患者さんの中には、コロナ罹患後の後遺症を訴える人が確実に増えています。味覚障害や脱毛、長引く咳、疲労感、様々な症状で学校に行けなくなったり、仕事ができなくなったりと、毎日の生活に大きな支障を来している方もいらっしゃいます。

世界保健機構(WHO)では、コロナ後遺症を「新型コロナウイルスに罹患した人にみられ、少なくとも2カ月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないもの、通常はCOVID-19の発症から3カ月経った時点にもみられる」と定義しています。だるい、息苦しい、頭がボーっとして思考力が落ちるなどの症状が、感染から3か月以上経っても続く状態は、海外では「long COVID」と呼ばれています。一度症状が治まっても、再び現れることもあります。症状には様々な要因が絡んでいると考えられており、4人に1人が発症から半年経っても何らかの後遺症を抱えているという報告もあります。

コロナ後遺症の原因としては、自己抗体、感染症などを契機とする過剰な炎症反応(サイトカインストーム)、活動性のウイルスそのものによる障害、不十分な抗体による免疫応答などが考えられていますが、明確には分かっていません。治療も一般的には、症状に合わせて、内服薬や漢方薬などを処方し経過をみますが、通常の治療では改善が難しい場合も多いです。

最近、通常治療では改善しない患者さんに対して幹細胞培養上清液(エクソソーム療法)がコロナ後遺症に有用との報告があります。幹細胞培養上清液には、組織修復、炎症抑制、血管新生などの働きがあり、これらの作用によってコロナウイルスによって弱った体内の細胞や組織を活性化させることを目的としています。当院ではコロナ後遺症の治療の選択肢の一つとして幹細胞培養上清液を用いた治療を行っています。効果は個人差がありますが、気になる方はお問合せ下さい。


2023年08月04日(金)
減量効果が高い糖尿病の新しい注射薬「マンジャロ」が発売されました


2023年4月に糖尿病の新しい注射薬であるチルゼパチド(商品名 マンジャロ)が発売されました。このマンジャロは注射薬ですが、インスリンではなく持続性GIP/GLP-1受容体作動薬の注射薬で、週1回行うタイプです。ビクトーザやオゼンピックと同じ種類で、インスリン抵抗性を改善し、食欲抑制スイッチに作用する薬です。本邦では2型糖尿病治療薬として発売されています。GIP受容体にも作用することにより、今まで血糖低下作用や体重減少効果が最も強いとされるGLP-1受容体作動薬のセマグルチド(商品名 オゼンピック)を上回る効果が臨床試験で確認されています。現段階で最も効果の高いインクレチン関連注射製剤で、最強のダイエット注射とも言われるのはこのためです。

ここで、マンジャロとオゼンピックを比較したデータを見てみますと、


平均体重が約93.8kg(海外なのでこの体重です)の人が40週間(10ヶ月)で 
オゼンピック1mg: -6.2kg
マンジャロ5mg: -7.8kg
マンジャロ10mg: -10.3kg
マンジャロ15mg: -12.4kg
オゼンピックの2倍の減量効果があります。

次に、日本人のデータでは、

 

日本人平均体重78kgの人が52週間(約1年)で

マンジャロ5mg-5.8kg

マンジャロ10mg-8.5kg

マンジャロ15mg-10.7kg

こちらも非常に強い減量効果が認められてます。




このマンジャロは、薬と針がセットされている一体型のペン型タイプです。キャップを外してペンを皮膚にあてボタンを押すだけで簡単に注射ができるので、マンジャロアテオス(あてて、押す)の名前の由来にもなっています。投与量は2.5mgから開始し徐々に増量、最大が15mgになります。マンジャロの副作用は、嘔気・嘔吐、便秘などの胃腸障害が多いですが、使用を継続するにつれて改善傾向となります。また、膵炎や胆嚢炎の報告もあり、併用薬剤によっては低血糖のリスクも伴うため注意が必要です。
 
【まとめ】 
・マンジャロはGIP/GLP-1受容体作動薬です。

・オゼンピックやリベルサスはGLP-1単独の作用でしたがGIPの受容体にも作用するので、血糖値を下げる作用や減量効果がより一層高まっています。

・肥満を合併した2型糖尿病の方で既存の治療では血糖コントロールが難しい場合に良い適応になります。(新薬のため2週間分しか処方できません。)

・本来は糖尿病治療薬ですが減量目的でも高い有効性がある薬剤です。(ダイエット目的の場合は自費診療です。当院の肥満外来でも使用しています。)
 

2023年07月28日(金)
 コレステロールや中性脂肪を下げるには

春の定期健康診断結果が届く時期ということもあり、コレステロールや中性脂肪が高いと指摘を受けた方々から「食事はどのように気をつけたらいいですか」とよく聞かれます。

・食物繊維を多くとる
・カロリーオーバーにならないようにする
・中性脂肪が高い人は、ご飯・パンなどの糖質とアルコールを制限する
・LDLコレステロールが高い人は、脂質、特に肉や乳製品などの動物性脂肪(飽和脂肪酸)と、コレステロールを多く含む食品(肉魚の内臓類、魚卵、卵など)を控える

と、簡単にご説明します。
先日、患者さんから
「オリーブオイルは動脈硬化を防ぐと本に書いてあったので、たくさん取るようにしています」とのお話がありました。
オリーブオイルもやはり油なので取り過ぎれば体重が増え、中性脂肪を上げてしまいます。ほどほどの量にすることが大切です。
それに対して、イワシやサンマなどの青魚に含まれるオメガ3系脂肪酸(DHA、EPA)は、動脈硬化を防ぎ、中性脂肪を下げる働きがあるので、たくさん食べると良いです。サプリメントなどで補うこともオススメです。


2023年07月20日(木)  
手汗の治療薬 アポハイド®ローションとは?

だんだん梅雨の蒸し暑い日になって、汗が気になる季節になりました。

脇汗にはエクロックゲルやラピフォートワイプがありましたが、このたび手汗(原発性手掌多汗症)に対する新しい塗り薬「アポハイドローション®」が61日から処方可能になりました。11回就寝前に手のひらに塗るだけです。


当院は内科のクリニックですが、通院中の患者さんから手汗のご相談が時々あります。手から汗がしたたる程の方、コピー用紙が手についたり、机が濡れてしまって困る方、車を運転する際にハンドルが濡れてしまうなど症状が深刻な場合もあります。そんな患者さん達に早速処方したいと思います。


エクロックゲルやラピフォートワイプと同じように交感神経に作用するので、外用後は眼や口を触らないように注意が必要です。